タイガー&ドラゴンについて

タイガー&ドラゴン

男なら落語だろっ!
確か高校生の頃。メンズノンノにスタイリスト伊賀大介(のちの麻生久美子の旦那様)のページで、こんな見出しが躍っていた。

落語というと、どうもジジくさいだとか小難しそうなイメージ。それを伊賀と春風亭昇太が「落語ってそんなに難しいもんじゃないぜ」って解説してくれる特集だった。
しかし、ぼくはそれを読む前に既に落語にハマっていた。そのきっかけがクドカンのドラマ、タイガー&ドラゴンだ。

そもそも落語とは

落語(らくご)は、江戸時代の日本で成立し、現在まで伝承されている伝統的な話芸の一種である。最後に「落ち(サゲ)」がつくことをひとつの特徴としてきた経緯があり、「落としばなし」略して「はなし」ともいう。「はなし」は「話」または「噺」とも表記する。
(中略)
能楽や歌舞伎など他の芸能と異なり、衣装や道具、音曲に頼ることは比較的少なく、ひとりで何役も演じ、語りのほかは身振り・手振りのみで物語を進め、また扇子や手拭を使ってあらゆるものを表現する独特の演芸であり、高度な技芸を要する伝統芸能である。
落語 - Wikipediaより

こう書かれるといかにも小難しい。
なのでわかりやすく書くと「時代江戸のすべらない話」だ。
人情噺なんかもあるが、基本はただただ面白い話。最後にううむ、そういうオチがくるか!という感動は良質な短編ミステリにも通じるところがある。

伊賀大介「男って把握したいじゃないですか。ロックでもサッカーでも。知識から入っちゃう」
春風亭昇太「落語に限らずきっかけだけの話なんだよね。1回ぐらいいいじゃん」

タイガー&ドラゴン

タイガーアンドドラゴン
落語という題材が若者ウケしなかったからか、視聴率はイマイチよくなかったっぽい。
もったいない!落語って面白いんだぜ。

あらすじ

ヤクザ山崎虎児長瀬智也)は、幼い頃の悲痛な体験により笑いを忘れてしまった男。たまたま浅草の寄席で見た落語家の林屋亭どん兵衛西田敏行)に感動し、弟子入りを志願する。
しかし笑いを忘れヤクザに染まった虎児には才能がなく、稽古がはかどらなかった。そんな折に虎児は、天才といわれたものの落語家をやめ、裏原宿でダサくて売れないショップ「ドラゴンソーダ」を経営するどん兵衛の次男、谷中竜二岡田准一)と出会う。
落語をやりたいが才能のない虎児、落語の才能があるがやりたくない竜二をめぐり、笑いあり涙あり?のどたばた劇。

ここがみどころ

ほんとはもっともっと書きたいけど!列挙。

落語の内容と現実のリンク

だいたいの噺は舞台が江戸時代であったりするのだが、落語を覚えたいが覚えられない虎児は、最近あった出来事をモチーフにかなり改変して落語を構築する。毎話落語の内容と同じような出来事が虎児やその周りの人物にふりかかり、それを元に噺を作り替えるのである。
これによって落語になじみのないぼくでもすんなり意図を汲むことが出来た
先ほどミステリに例えたように、あまりに予想と違う角度のオチがくると「え?つまりどういうことだってばよ」状態が起こりかねないのだが、現代に落とし込まれた落語の内容は「なるほど」と腑に落ちる、安定感を生み出している。
落語の気持ちいいところを、誰でも味わえるのだ

キャスト

クドカンオールスターズとでも言うべき布陣。IWGP長瀬智也木更津キャッツアイ岡田准一のダブル主演の時点でもう面白さは保証されたようなものである。
阿部サダヲ塚本高史桐谷健太笑福亭鶴瓶春風亭昇太星野源など、おなじみのメンバーから意外な伏兵までぬかりがない。

小ネタ

クドカンといえばこれでしょう。たくさんありすぎて紹介しきれないが、馬鹿らしくて文字でも伝わりやすいのだとこれ。

どん兵衛は虎児の所属する新宿流星会に400万円の借金があった。そのため、虎児が新しい噺を覚えるたびに授業料として10万円をどん兵衛に払い、その10万円を借金の取立てでその場で回収するという奇妙なシステムが生まれる。
どうせ払ってそれを取り立てるのだから、そもそもお金を渡す必要はないのだが、毎回必ず

「師匠、お世話になりました」10万円スッ
「うん、上達したね、これからもね、がんばりなさい」
「はい、ありがとうございます。……オラァ今月の取立てだコラァきっちり耳揃えて払え馬鹿ヤロー」
「はい!はい!本当にすいません、これ今月の……」10万円スッ

のくだりをやるのである。下らなくて最高だ。

ていうか落語って本当に面白いんですか?

浅草演芸ホール
ドラマに感化されたぼくは、寄席に行った。寄席というのは落語をメインに手品や漫談や漫才などもろもろの演芸を楽しむ場所である。

たとえばぼくの行った浅草演芸ホールでは昼の部が11時40分~16時30分、夜の部が16時40分~21時00分。
ぼくを含む3人は全員寄席が初めてであり「もし面白くなかったらどうしよう……」という一抹の不安を抱えていた。

それは杞憂だった

途中にはさまれる休憩時間以外、ぼくらは席を一切立たずにぶっ通しで観ていた。出入り自由にもかかわらず。4時間ほど、まるっといただいたのだ。
ぼくたちは妙な達成感と大人への階段を登った実感とで、美味しいビールが飲めたのだった。

ちなみに入れ替えなしなので朝から夜までぶっ通しでいることも可能