NAHAVANDについて

Nahavand

音楽ジャンルというのは、誰かとコミュニケーションをとるために必要だ。
どういう音楽が好きか、という話で、「ギターが激し目で、ボーカルがシャウトしてて、ベースが、ドラムが、」こういうのは面倒だから一括りにロックという。

でも、ジャンルなんてその程度のもので、実際大切なのは格好いいかどうか。そこなのだ。

先に書いておくとNAHAVANDの詞の中で「ヒップホップ? ギターロック? はいはい評論家ごっこはブログでやって」というのがある。
もちろん彼らはそんなジャンルの縛りでダサい音楽をやっている、聴いている連中への皮肉を言っているわけだが、そんなごっこを今回はやろうと思う。愛を込めて。

NAHAVANDとの出会い

Nahavand
NAHAVANDはたったふたりのバンドだ。ニハーヴァンドと読む。
MCとギターのコンビを果たしてバンドと呼ぶのか、というのは人によるところだが、ぼくは彼らにはその呼び方が似合っていると思うので、バンドとして扱いたい。

ぼくが彼らを知ったきっかけは、正直よく覚えていない。
The Cigavettes(というか山本幹宗)経由だったような気がする。Twitterとかかな。

初めて聴いた曲がStyle Band Nahavand。


いきなりやられた。
ゆら帝のサンプリング間違いねえ Crazy Worldで生き抜く

NAHAVANDの音楽性

nahavand back again
ラップと、ギターロック。
そう言ってしまうとあまりに簡単、しかしこれだけでは表現しきれない。

一般的に言うミクスチャーというと、ロックの中にラップのフロウを持ち込んだイメージが強い。
対してNAHAVANDはヒップホップの中でロックが鳴っているようなイメージだ。

ミクスチャー、とは一線を画している。
もっと純度の高い音楽だと思う。格好つけた言い方をするなら、NAHAVANDが出したい音がヒップホップやロックの系譜にあるだけで、実際はどっちにもくくれない
結局評論家ごっこをしている奴ら(もちろんぼくも含め)が勝手にどこかにだけなのだろうジャンル分けしているだけなのだ。

ロックとは何か、というと冒頭の話になる。
ギターがぎゃんぎゃん鳴っていればロック?

いや、そうではないだろう。

NAHAVANDは内面的な部分でロックを強く感じさせる。
それが一番分かりやすいのが詞、リリックである。
気に入っている部分を抜粋し、曲を紹介する。

ロキノン ミューマガ 音楽と人 MUSICA
所持金2000円じゃ乗るのは無理か
Soul Dwells In Style feat. The Cigavettes



ヘインズにグラミチ 疲れたら近道
俺はもうちょっとだけペースを上げる
Hold On feat.Gotch



ハイカットのコンバースにApril77穿いてたあいつも今じゃ立派なデブ
MADE

ボーカル、ラッパー、MC、宮内

Nahavand 宮内

-未来で、未来に、未来を鳴らす音 Vol.07- | EYESCREAM

宮内のフロウはかなり変化していて、初期の楽曲だとほとんど歌詞が聞き取れない
最近の楽曲は(本人曰わくゴッチの影響とのこと)内容を伝えるべく、メッセージありきのものに変わっている。

↑聞き取れないころ。

ぼくはどちらも好きだ。

Twitterとか、インタビュー記事を見ていると分かるけれど、かなり生意気。
それでいいと思う。

音楽をビジネスにするというのは誰しも少なからず葛藤を抱えるもので、つまりやりたい音楽と売れる音楽のバランスに悩まされるということ

宮内は、売れる売れないは度外視しているように感じられる。
いや、ある程度は売れる、というか人に受け入れられる作品を意識し始めたのがフロウの変化だと思うけれど、根底にあるのは「俺がいいものと認めなければ世に出さない」という確固たる自我だ。

これもまたNAHAVANDのロックである。

そういう自我の見えないロックバンド、無個性なロックバンド、ロックバンドと呼べるのかどうか分からないようなロックバンド。
それらに「ファック」と中指を立てられる男が宮内だ。

ギター、時里

Nahavand
控え目だが、トリッキー。
ビートアプローチが独特だ。

どうしてもこういう構成のバンドの場合歌、ラップ、そこに注目されがちだけれど、ギターもかなり匠の仕事をしている。

近年の曲だとトラック自体がヒップホップ寄りで、初期のようにバンドサウンドっぽくないけれど、そこに違和感なく溶け込んでいるのが時里のギター。

彼はルーツがあまり見えなくて気になっている。
オルタナ周辺の雰囲気はするし、ザ・ドラムスのTシャツをよく着ているから、そういう空気のものが好きなのだろうという気はするけれど、測れない。

どっか色気のある感じとか、グレッチのギターとか、ベンジーイズムを感じさせるところもあるし。
なんだか不思議なバランス感覚である。

まとめ

格好いい音楽はチャートの外にもごろごろ転がっている。
売れるものが正しいとは限らないし、かと言って売れてないからこそ格好いいというのも言い訳になる。

NAHAVANDはそのミュージシャンの葛藤を丸ごと飲み込んで、シーン(このシーンっていう言葉も、なんかダサいとは思う。ただ代替品が思い付かない)に挑戦状を叩きつけてくれるバンドだ。

「格好いいかダサいかじゃねえ NAHAVANDかダサいかだぜ」

Chance The Rapperのような音源をリリースしないでメインストリームまでのし上がってくるミュージシャン、岡崎体育のようなSNSYoutube時代の寵児とも言えるミュージシャンがいる。
彼らのように、今の時代をサヴァイヴするタフネスを、NAHAVANDもきっと持っている。