Spotifyプレイリスト "BASS GROOVE BASS"について

キラークイーン

久々にレッチリを聴いていたら、やっぱりベースの目立っている音楽は格好いいことを再確認した。
正確に言えば、バンドのそれぞれの音がしっかりと主張しあって絡み合っているのが格好いいのだが。

まあ、よくある『ベーシスト必聴!』みたいなものと思ってもらって差し支えはない。
いちリスナーの選ぶイケてるベースが聴ける20曲だ。



BASS GROOVE BASS

楽器に触れたことがない人は、もしかするとベースという楽器がどういうものなのかよくわからないかもしれない。
バンドの花形はボーカルだったりギターだったり、確かにそれも間違ってはいない。

しかし、ドラムとともに屋台骨を支えるベースも、実はとても多種多様な色を見せてくれる楽器である。

ざっくり言うと、ステレオの真ん中で鳴っている音の低い弦楽器がそれだ(ギターは大体左右どちらかのチャンネルに振ってあることが多い)。

リズムを刻むのに徹したり、メロディを奏でたり、打楽器的なアクセントを加えたり、ギターとは違ったベースの格好よさを味わえる楽曲を集めた。

The Who - My Generation

ロックバンドにおけるベースの重要性は、既にこの時に開拓されていた。
ジョン・エントウィッスルの自由で躍動感のあるプレイは、60年代から今に至るまで変わらず唯一無二の存在と言える。
彼がいなければロックはギターが支配する時代がずっと続いていたかもしれない。そうでもないかもしれない。

Mr. Big - Colorado Bulldog

ハードロックなのに、お洒落でもある。
特にAメロのウォーキングベースはロック史の中でも指折りのかっこよさだと思う。
ハードロックやヘヴィメタルは古い、ダサい、と思っている人に聴いてほしい。

Queen - Another One Bites The Dust

かの有名な「負けて死ね」。
脳裏に焼き付くシンプルかつ呪術的なベースリフ。
ロックの名曲パターンとしてガツンといきなり印象深いフレーズを叩き込まれるものと、知らない間に頭から離れなくなってしまうものとがあると思う。
これは後者で、非常に淡々とした構成ながらも、ロックの魔法が随所に感じられる。

JUDY AND MARY - 散歩道

解散がバンドを伝説にしてしまうケースは多い。
再結成してほしいけれど、しないほうが美しい。
そんなエゴをずっと抱いてしまうバンド。
太いベースラインと複雑なギターアンサンブルは明らかにロックバンドのそれなのに、YUKIの声とメロディでポップに昇華されている。

Jamiroquai - Falling

シンセとホーンのイントロからドラム、そしてベースが入ってくるタイミングが絶妙でたまらない。
ジャミロクワイ史を語るうえで欠かせないベーシストであるスチュアート・ゼンダーの脱退後に作られたアルバムで、その脱退に関するごたごたから短期で製作された模様。
なので全体的にアレンジはシンプルで、逆にバンドのポテンシャルの高さを浮き彫りにする結果になったように感じる。

Red Hot Chili Peppers - Throw Away Your Television

レッチリはベーシストだったら誰もがコピーしたくなる曲のオンパレードで、どれを選ぶか迷った。で、ちょっと外したチョイスをしてみた。
徹頭徹尾ベースが主役で、手数が多い。
哀愁ある曲調とコーラスワーク、ラップにヘヴィなリズム隊、ノイジーなギター、まさにレッチリ節だ。

OKAMOTO'S - NEKO feat.呂布/MUD from KANDYTOWN

現代の日本人ベーシストのトップクラスに君臨するハマ・オカモト
親の七光りなんて誰にも言わせないガチモンのプレイヤーである。
ベースのフレージングやトーン、ゴーストノートの使い方、すべてがセンスと音楽愛に満ち溢れている。

Graham Central Station - Pow

スラップってそんなに好きじゃないんだけど(ずっとやられると脂っこく感じる)、ラリー・グラハムのそれは音作りなのか、非常に主張の強いベースなのにずっと聴いていられる耳なじみの良さがある。
プレイヤーのエゴが強くなりすぎると、リスナー的には飽きてしまうことはよくあると思う。
スラップベース史に残るだろう名曲はすべてが高水準だ。曲のまとまりもよく、プレイの質も高く、お手本のような曲である。

Blur - Beetlebum

ブラーの代表曲である。
ブラーはそんなにベースが主役にいるイメージではない。
しかし、テクニックをひけらかさずとも陰からアシストして大きく貢献するような曲が多い。
この辺の感覚はビートルズから続く王道なイギリスロックバンドの系譜だろう。

Thee Michelle Gun Elephant - WEST CABARET DRIVE

ごりごりに歪んだベースが引っ張っていくミッシェル初期の曲。
ミッシェルはアベフトシのカッティングを中心に構成される曲が多いが、こういったロックバンドならではのベースの立て方もする。
そんな「らしくない」曲をアルバムの頭に持ってきているのが面白い。

Led Zeppelin - Living Loving Maid(She's Just a Woman)

どちらかと言えば長尺で複雑なロックよりも、ソリッドでシンプルなロックの方が好きだ。
だから、ツェッペリンは後期より初期3枚目くらいまでがいい。
ジョン・ポール・ジョーンズ押し引きが絶妙なアレンジで、ギターとユニゾンしたり裏でメロディを弾いたり。
曲を支えることも主役になることもできる、ベースという楽器のポテンシャルを見せてくれる。

Jackson 5 - The Love You Save

若きマイケル・ジャクソンが所属していた実の兄弟からなるポップなソウル・グループ。
途中でジャクソンズに改名するのだが、ジャクソン5時代はモータウンというソウルやR&Bの名門レーベルに在籍していた。
この曲もまさにモータウンな多幸感とグルーヴ感でいっぱいの曲だ。
特にサビ部分のベースが非常にシンプルなのに印象に残る、見事なアレンジである。

Marcus Miller - Nikki's Groove

まさにベーシストが主役な一曲。
ベースは基本的にバンドの低音部分を担うのだが、マーカス・ミラーの音作りはアタック感が強くハイからミドルがよく出ていて、他のベーシストとはかなり異なるセッティングであることがわかる。
ベースを主役に据えリズム、メインメロディ、低音パート、すべてを一手に担わせるとどうなるのか、というとても真似のできない芸当をやってのけているスーパープレイヤーだ。

くるり - 赤い電車

ギターやシンセがほとんどおまけ程度のウワモノとして鳴っていて、ベースと打ち込みっぽいドラムが曲を進行していく。
タイトなリズムとポップなメロディを共存させて、とてもかわいらしい印象のベースラインだ。
なんとなく、鼓動のリズムとシンクロするような安心感を抱かせてくれる。

Yes - Long Distance Runaround

ロックバンドにおけるベースの在り方を紹介するにあたって、イエスは外せなかった。
しかしプログレッシブロックはだいたい曲が長尺で、長尺の曲があまり好きではないのに加えプログレバンドはアルバムトータルで聴くものだと思っているので、悩んだ末に3分半で当時のベーシスト、クリス・スクワイアのすごさと不気味さがわかるこれを選んだ。
とにかく奇妙で、奇天烈で、大きなインパクトをもたらすベースなのは間違いない。

東京事変 - OSCA

とにかくごりごりに太い音色で亀田誠治の目立ちまくる曲。
ぼくはこの曲が東京事変の中でもトップクラスに格好いいと思うのだが、あまり周りで好きな人がいない。
ちょっとポップさが薄いのだろうか? 各楽器のアンサンブルに漂うバチバチの緊張感が最高だと思うのだけれど。

Primus - Tommy The Cat

変態バンドとして名高いプライマス
ごく一般的な音楽観のぼくからするとほとんどの曲で「どういう発想でこの曲できんねん」とツッコミを入れたくなる。
歪ませたベースの速いスラップは中毒性が高く、他のバンドでは聴くことのできない強烈なカラーを持っている。

The Stone Roses - Good Times

オリジナルアルバムが2枚しかないにも関わらず伝説として君臨するバンド、ストーン・ローゼズ
ベーシストのマニはローゼズ以降はプライマル・スクリーム等に参加している。

さてこの曲は2ndアルバムからのもので、ヘヴィなギターとダンスビートの融合がUKロックの正統進化を感じさせる。
ポップな1stもいいが、ぼくはこの路線の方が好きだ。

The Beatles - Getting Better

ポール・マッカートニーの歌うようなベースは独特の音色だ。

だいたいバンドでボーカルが楽器を兼任する場合、ギターが多い。
ギターが二人以上いる場合はシンプルなパートをボーカルがやり、複雑なプレイはギター選任がやる、というのが一般的。

ポールはベースボーカルというやや特殊な立ち位置なため、何がどう違うかと聞かれると難しいのだが、ベース選任のプレイヤーが作り出すフレーズとは一線を画しているように思う。
この曲もポールがメインボーカルを担当している。

Steely Dan - Kid Charlemagne

ポップの土俵でロックやジャズのニュアンスを感じさせるスティーリー・ダン
AORなどともいわれる。Adult-oriented Rock、大人向けのロックの意。
この曲は主役はギターなのだが、耳を澄ますと、ギターが自由に動き回っているのはベースの安定感ありきなのだとわかる。
決して前に出すぎず、しかしただリズムを刻むだけにとどまらない、まさしく大人のスタイルである。

まとめ

いろんなジャンルに趣の異なるベーシストがいて、バランスよく選ぶのが難しかった。
結果的にはロック寄りになったが、ファンクやソウル系にも外したくない方々がたくさんいたので、若干歯がゆい。

それでも、概ね格好いいものばかり集められたとは思う。