高校生の頃は、将来的にはちょっと出かけるにもスーツを着るようになるのだと夢想していた。
全然違ったわ。
大人が着るためにモディファイされたカジュアルウェアの話。
チノパンの歴史
チノパンについて軽く調べてみたのだが、思いのほか蘊蓄が多くにわか仕込みではちょっとどうにもならないということが分かった。
というわけで、基本的なことだけまとめておこう。
・ルーツは英国陸軍。
19世紀半ばにインドに駐留していた英国陸軍の部隊長ハリー・バーネット・ラムズデンが考案したといわれている。当時の英国陸軍の制服は、赤い上着に白いパンツという華麗なものだった。しかしこのユニフォームは、埃っぽいインドでは目立ちすぎるし、汚れやすい欠点があった。
そこでラムズデン士官は、斥候の任務がある自分の部隊だけのために白いパンツを土色に染めるアイデアを思いついたのである。染料は現地調達。試行錯誤の末、彼はコーヒーとカレー粉と桑の実を濁った川の水にミックスして、カーキ(ヒンズー語で泥や埃の意味)色に染めたといわれている。
Vol.41 41カーキとドレスチノ、2種類あるチノパンの生い立ちと使い方を知っておきたい。 | NEWYORKER MAGAZINE | ニューヨーカーマガジン
・時期によってサイドシームの縫い方やバックポケットなどディテールが異なる。この辺りはミルスペックに準拠するため、サンプルが少なく曖昧な点も多い。
・中国(China)製の生地を使用していたために、なまってチノ(Chino)になった説が一般的。
第一次世界大戦中に、アメリカの陸軍が軍服の素材として使用しており、中国(china)から生地を購入していたことが語源と言われる。
・1941年モデルを41カーキ、43年が43カーキ、45年が45カーキ……とリーバイス501なみにマイナーチェンジを繰り返し呼称も変わっている。
MILITARY CHINO PANTS "CHARLS"
この"チャールズ"は45カーキをベースに作られたチノである。
ベドウィンのアイテムにはすべて名前がついていて、例えばチャールズというのはフルレングスのテーパードパンツを指している。
その他のパンツ類では8分丈でゆるいフィットのトリップスター、9分丈で細身のジェシーなどがある。
そうやって定番シルエットに名前を付けながら、毎シーズン色々な生地で作っているのが面白いところ。
たとえばディッキーズとのコラボであったり、高級ウールのスラックスであったり、45カーキの再現だったりする。
色
元も子もないが、砂埃による汚れを目立たなくするためのあのベージュカラー、実はぼくはあまり好きではない。
いや、これもリーバイス501と同じで何度か挑戦はしているのだが、どうにも格好よく穿けない。
まあぼくに似合う色じゃないのだろうと勝手に思っている。
よって、このパンツはグレー(写真によってちょっと青っぽくなってしまったけれど)。
ディテール
基本的なディテールはヴィンテージを踏襲している。
両玉縁のバックポケット(これは45年より以前に多いディテールのようだ)に、フロントに配されたコインポケット、軍ものなので強度を重視した巻き縫い。
生地の厚みや巻き縫いによって肌あたりが悪くなったり邪魔になったりするのを防ぐために、オリジナルのチノパンではセンターループがオフセットになっている。昔のミシンの性能的に、生地を重ねすぎたら針が通らないからという理由もあるみたい。
それを踏襲しつつオリジナルの要素として、オフセットのループをクロスに配置している。粋である。
チノパンは50年代後半からボタンフライからジッパーに移行する。
このチャールズに使われているジッパーがまた特徴的で、あまり見かけないタイプのものだった。
ユニバーサル社のもので、引手の下に突起があって、
普通に下に向けてもここまでしか動かない。
ここからさらに「えいっ」と押し込むと金具が噛みあって、ぴた! と固定される。
ジャストサイズのパンツのジッパー、一番上まで上げてもなんだかおさまりが悪いなんて経験はないだろうか?
ぼくはある。このジッパーだとそれが解消される。結構画期的。