好奇心はA.P.C.のジーンズを殺す

a.p.c. プチニュースタンダード

このブログで紹介されているアイテムのほとんどは、流行の上にないもの、そもそも流行り廃りがないものが大半である。
流行を求める人はきっとここに辿り着かない。

が、割と最近まで確かに流行っていたものがある。

それはA.P.C.のジーンズだ。

A.P.C.のジーンズの流行について

a.p.c.の人気
言わずもがなだが、A.P.C.のジーンズはかなり匿名性が高く、ブランドの主張がほぼない。非常にシンプル。
それが、確実に流行っていた。

スキニージーンズが流行から定番になったように、ノームコアから始まるシンプルなコーディネートが普及しマジョリティになった。
恐らくは
「迷ったらA.P.C.のジーンズ買っとけ」とか
「シンプルが故に際立つ上品さ」とか
色んな文言で色んなところが推していたのだろう。

間口も広い。
普段どんな格好をしてどんなブランドを選んでいるのか、それにあまり左右されない余裕がある。
かつてSupremeとコラボをしていたこともあるし、見た目通りのスノッブなフレンチカジュアルでも当然いけるし、何にでも混ざれるユーティリティプレイヤーなのだ。

しかし、その流行は悲しいかな既に終わっている。
いや、どちらかと言えばあるべき位置に戻っただけなのかもしれない。
うん。別に悲しくもないしな。

なぜ流行が終わったと言えるか?
シンプルに「A.P.C. ジーンズ」とか「プチニュースタンダード」とかその辺のキーワードでこのブログにたどり着く人が減っているからである。

流行が終わったというより落ち着いたって感じか。

シンプルファッションは流行か?

ミニマリストのクローゼット
ファッションの流れは、確実にカウンターアクションを起こす。
タイトな服のあとにはワイドな服が流行り、綺麗な服のあとにはカジュアルな服が流行る。

シンプルな服というのはつまり特徴がないわけで、そこに対するカウンターというのは何なのだろう。
解が明確に得られている人が少ないから、闇雲にシンプルファッションを過去のものにしようとしたり、イケてないものにしようとしたりといった動きが起きる。
「シンプルがお洒落とか言っちゃうわけね(笑)要は逃げでしょ(笑)」みたいな。そして闇雲に最先端の服を誇示する。

前述のように、あるべき位置に戻っただけなのだ。

新しいものが生み出されたわけではなく、元からあったものが日の目を見ただけ。

そもそもシンプルファッションとかノームコアがお洒落だと思わない
シンプルな服が好きだけど、お洒落をしたいという気持ちが、ぼくには稀薄ですらある。

これはお洒落の定義の話になってややこしい上に意見が分かれるところだから、あまり掘り下げない。

とりあえず、お洒落であることにあまり興味はない。服は好きだ。

ジーンズを育てるということ

リーバイスのバックポケット
話をA.P.C.に戻そう。
とりあえず「綺麗なジーンズ一本持っときたーい」的なマインドで買ってみた層は、もう死滅している気がする。

色落ちのことは特に気にしていない→でも買ったからにはケアの仕方が気になる→調べる→え、洗わないの?→とりあえず穿きこむ→なんやかんやでいい感じになってきた気がするから洗う→リジッドでもアイスブルーでもない中途半端な色に仕上がる→いらね

このルートを辿った人はかなりいると思われる。
それもまた経験というか、ジーンズは試行錯誤とトライアンドエラーだから、やむを得ない。

逆に今A.P.C.のジーンズが気になっている人というのは、流行からの観点ではなくジーンズ自体に興味を持った人だと推測できる。
だから、おそらくフリークになる。
ジーンズのある生活を知ることができる。
日々の悲喜こもごもを、ジーンズに記録していくことができる。

ジーンズを育てる、なんて行為はもろにアンチファッションなのだ。
だって、毎日同じジーンズを穿いたファッショニスタなんて、ちゃんちゃらおかしいじゃん。

情報の精度

白夜行
人気があるものの評価を、ぼくはあまり信用していない。
学生時代、東野圭吾の本が頻繁に実写化され、周りも何かと言うと東野圭吾を読んでいたのだが、ぼくは避けていた。
ぼくはミステリ好きである。しかし読まなかった。

たくさんの本を読んできた人が面白いという評価を下すのと、読書体験が皆無の人が人気があるから読んでみて面白いと評価を下すのは、価値が違う。

人気があるものには、価値の薄い高評価が大量に混ざる

現代でも同じ。
価値の薄い評価の上澄みをさらっていくキュレーションサイトとかね。
ああいうのは、なんの文才もいらないし、なんならスクリプトでも出来ることだ。

要するに、人気が去った後にこそ、ものの真価が問われる。
まあ、ぼくの知らない時代でもA.P.C.は流行っていたようだから、流行は繰り返すというだけでぼくも後追いのひとりか。

そして東野圭吾も、読んだら割と面白かったしね。

まとめ

ぼくはインスタ映えなんかめちゃくちゃどうでもいいし、そもそもインスタをやってない。
ネットでイキるための道具として服を買う時代に、ぼくは昨日と同じジーンズを穿く。

アイデンティティーは、金じゃ買えない。