続 街中で使うアウトドアウェア

長時間露光の渋谷

安くていいものと高くていいもの。
後者を選ぶならば自分の中で納得のいく理由がほしい。

とりわけアウトドア系ブランドのプロダクトはその理由が見つけやすい。

アウトドアウェアについて再考するきっかけになったのはミレーの店員さんとの会話である。


MILLET TYPHON 50000シリーズ

ミレーのロゴ
アウトドアウェアとざっくばらんに言ってもその種類は多岐にわたる。今回は防水性のあるジャケットをメインに考えたい。

ぼくがミレーで気になった商品はティフォン50000というシリーズ。

ティフォン、typhonとはフランス語で台風。英語で言うタイフーン。

「これは、耐水圧が20000mmあるんですよ」

「ほう……にまん……って、あんまりぴんとこないのですが」

登山ウェアに必要なのが20000mmと言われています。一般的な傘が500mm程度です」

「えっ! 傘よわっ」

「テントが1500mmくらいですかね」

「じゃあ20000mmって、必要充分じゃないですか。逆にそこまでの数字、なんで必要になるんですか?」

「登山だと、例えばザックを背負った肩部分など、力の加わるところから水がしみこむ可能性がありますね」

「ああ、雨の強さというより二次的なものが原因で」

「そうですね。あとは、腰かけたときに背中とかおしりとか」

「なるほど。ってことは、街中で使うとしたら」

20000mmあったらほぼ無敵です」

本来の用途で使うとしたら、二次的原因で水がしみこむ可能性はある。
が、タウンユースでは、そこまでハードな環境はほぼないと言っていい。
まあ、大雨でも傘を差さずにレインジャケットを羽織って出かける都市人間もいるのかもしれないが、それは特殊な例だろう。

ゴアテックスのネームバリュー

ゴアテックスのロゴ
驚いたのは、ティフォン50000のストレッチ性だ。

ティフォン50000はとても軽量で、しかもごわつきがなく、かなり伸びる。
だからぼくはこれを一見防水ウェアではなく、多少水をはじく程度のライトなジャケットだと思った。

「ぼくの持ってるゴアテックスのジャケットって、伸縮性なくて、結構硬い感じです」

「ああ、一般的なゴアテックスはそういうものが多いですね」

「防水性を維持してストレッチ性を持たせるのは難しいのですか?」

生地の表面が伸びると、そのぶん目が引っ張られて大きくなりますから、そこから水が入りやすくなるんです。なので、防水かつストレッチ性がある、というのはちょっと難しいのですが、ティフォン50000はそれを両立させたシリーズです」

「コロンビアのサイトで見たんですけど、ゴアテックスを使うとそのぶん割高になるから、防水透湿のためのファブリックを自社開発するって書いてありました」

「ええ、そういう面はありますね。うちでもゴアテックスを使っているジャケットはありますけれど」

「こうやって説明してもらわなければ、なんとなく『ゴアテックスってついてるほうが信頼できそうだな』ってなりそうです」

ゴアテックスが効果を発揮できないケース

熱帯雨林
ゴアテックスも色々種類があって、それぞれに適応した場面があるので、ティフォンシリーズの方が優れているとかゴアテックスの方が優れているとか、それは一概には言えないのですが」

「はい、わかります」

「ただ、用途によってはゴアテックスのジャケットも、あまり効果を発揮しない場面があるのです」

「ほお?」

ゴアテックスは、内側と外側の湿度の差で透湿するんです。だから、通常、体側が蒸れるため外にその蒸れを放出しようという動きになります」

「ふむふむ」

「ですが極端な話、外気の湿度が非常に高い地域、スコールの降るような場所だったりすると、内外で湿度の差がうまれにくくなりますので」

ゴアテックスの透湿性が失われる、と」

「そうですね。なのでお客様の用途によってはゴアテックスをおすすめしないこともあります」

再考

アウトドアウェアを着た男
ちなみにティフォン50000の50000は透湿性の値。

ミレーが独自に開発した極薄メンブレン、“ドライエッジ ティフォン50,000”が、50,000g/m2/24hという最高度の透湿性を実現。 気温も湿度も高くなる日本の春夏シーズンでも、着用したままでの長時間行動が可能に。


TYPHON 50000(ティフォン50000)シリーズ | Milletより

この数値がどういうものなのかを聞きそびれてしまった。

が、一般的なゴアテックスとティフォンシリーズを引き合いに出して比較している記事を発見したので載せておく。

今回ミレーに行って感じたことは
ゴアテックス以外にも防水ジャケットの選択肢は多い
・街中で求められるスペックはそれほど高くない

ということ。

また日常的に着るものならば取り回しの楽さも重要で、実はゴアテックスの性能維持は結構大変。

家庭で洗濯はできるが、その際ゴアテックスの層に洗剤が残らないよう入念にすすぎをしなくてはならない。
そして表面生地の撥水性が落ちるのでアイロン等で熱を加える。
原理は分からないが、これで撥水性が回復する。あとはスプレーな。

脱水にかけても生地が水を通さないためびしょ濡れの状態で出てくるし、ぽたぽたしたたるので梅雨の時期などは部屋干しするなら下にタオルを敷いておかねばならない。

と、まあ、いろいろ面倒くさい。

その辺は諸説あるらしく、ミレーの店員さんは「洗うことによる劣化もあるから洗濯は最小限、基本は性能が落ちてきたら防水スプレーで対応」とのこと。
あれやこれや話を聞いてなければ「いやゴアテックスのサイトでは洗えって書いてたしこいつダウトだろ」と思っていた可能性が高いが、信頼に足る店員さんだったので、その辺は人によるのだろう。

まとめ

アウトドアウェアのスペックを見ていくとなんとなく自然にゴアテックスにたどり着いていたのだが、各ブランドの自社開発素材にも面白いものは多い。

なにより、アウトドアウェアをアウトドアではなく街中で使おうというケースでは、本格的なスペックが必要になることは多くないのだ。
これは何度も感じてはいるんだけれど。

自転車用レインジャケット選びの視野が広がったように思う。