The Strokesについて

ストロークスのメンバー

ガレージロックリバイバルと呼ばれるムーブメントが2000年代に起きた。
文字通り、60年代後期から70年代に生まれたガレージロックの再興である。

その代表的なバンドであるストロークスは、いつしかただのガレージロックバンドには括られない存在になっていった。

The Strokesのメンバー

中期ストロークス
L→R
ニコライ・フレイチュア:Ba
ファブレツィオ・モレッティ:Dr
ニック・ヴァレンシ:Gt
ジュリアン・カサブランカス:Vo
アルバートハモンド・Jr:Gt

の5人で編成される。

ヴォーカル、ギター2人、ベース、ドラム、というのは、例えばローリング・ストーンズがそうであるように、ロックバンドの最も美しい形だと思う。

アルバムごとのバンドの変化について

1st『Is This It?』

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドテレヴィジョンを思い出させる音で、ガレージロックリバイバルの筆頭として挙がるアルバム。

シンプルで、曲もコンパクトにまとめられ、キャッチーである。
多くのバンドがそうであるように、ストロークスもまた1stがベストだというファンが多い。



2nd『Room On Fire』

1stの延長にありながら、後に思いきり開花するストロークスの(もしくは、ジュリアンの)ソングライティングの幅広さを感じさせるアルバム。

例えばこれなんかは



ごくごくシンプルなサウンドだが、脳裏に焼き付くメロディとリフ。


かと思えばやや実験的で、不思議なサウンドのこんなのも。



これはメインフレーズがシンセのように聴こえるが、ニックがギターのトーンを思いきり絞ってコーラスをかけることで作った音色らしい。

3rd『First Impression Of The Earth』

地球の第一印象、という大仰なタイトル。

このアルバムからはっきり1stの路線から離れ始める。
ガレージロック然としたサウンドは薄まり、よりハイファイでモダンな雰囲気に仕上がっている。

また、ストロークスといえばシンプルなギターワークがトレードマーク化していたのだが、この辺りからアンサンブルがかなり複雑化し始める。
ただジョン・レノン変拍子変拍子を意識させず聴けるように、全体としてはストロークス節に仕上がっているため、過去のアルバムと比較しても違和感はない。

進化と深化を感じさせるアルバム。



4th『Angles』

ここでついに、はっきりと過去のストロークスとは決別を告げる。

いや、おそらくは、根本的には変わっていない。
ジュリアンのソングライティングを中心として成立したストロークスは、たまたまデビューがガレージロックの音だっただけで、本人たちはガレージロックバンドであるという自覚は希薄だったに違いない。

ただ、世間のイメージするストロークスとの決別の意思を感じる。

実験的で、ロックの成分は薄まり、ニューウェーブとかテクノポップのような曲が多い。



今までのキャッチーさからすると、ちょっと分かりにくい曲、とも言えるかもしれない。

ファンの間でも評価の分かれる問題作。
ジュリアンはこんな歌詞も書いている。
「Everybody's singing the same song for ten years(みんな同じ歌を10年も歌ってやがる)」



5th『Comedown Machine』

4thまでは、変化を感じながらもストロークスとして聴くことが出来た。
が、ここで、「これストロークスの曲なの? 違うでしょ?」というところまで振り切れる。誇張ではなく本当に。



A-haですか?

このアルバム発売当時、プロモーションもなければツアーもなく、かなりそっけなくリリースされた。
聴きたい奴だけ聴いてくれ、みたいな。

その他の楽曲も、リード曲であるこれなんかは



初期を思い出させる感じがあるが、ジュリアンというソングライターを考えると「こういうの1曲入れとけばいいんだろ、どうせ」みたいな斜に構えたものなのではないかと疑ってしまう。
本当にジュリアンがやりたかったのはむしろ「らしくない」曲の方なのだろうと思う。

どの曲もキャッチーさはあまり感じられず、倦怠感とか浮遊感とか、そんな曖昧なものが蔓延している。
ただ、過去のストロークスにとらわれない人であれば、その気だるさが心地よく思えるはずだ。

Julian Casablancasという才能

ジュリアン・カサブランカス
先述の通りストロークスの舵を握っているのはヴォーカルのジュリアン。

彼はストロークスの傍ら、ソロや別のバンドでも活動している。





改めて、振り幅に驚く。
(余談だがソロの来日ツアーを観に行ったのだが、やはり一番盛り上がったのはストロークスの曲だった)

こうした別の活動を見ていると、ストロークスが彼の全てではないのだ、と思い知らされる。なんなら、4thあたりから、解散するんじゃね? なんて思っていた。
が、ストロークスストロークスでゆるゆると続いている。

ジュリアンのヴォーカルの良さと言えば、なんと言ってもその声だ。
しゃがれ気味で、なんならライブでは全然声が出ていなかったりするのだが(リアム・ギャラガーみたいに)、好調時はそれを帳消しにする圧倒的存在感を見せるのである。

そして卓越したメロディセンス



これは3rdのとある曲のデモ段階のものだが(これはこれで認知され、ライブでやったりもする)、おもちゃのピアノみたいな音と歌だけの曲でこれだけ魅力的なのだ。

The Strokesのファッション

ストロークスのファッション
ハイカットのコンバース、タイトジーンズ、スクールジャケット、ライダースなどなど。
メンバーそれぞれ違いはあるものの、アメリカっぽさとイギリスっぽさがないまぜになった感じ。

ストロークスはアメリカのバンドなんだけれど、リバティーンズとかその他のガレージロックリバイバル組がイギリスに多く、またサウンド的にもよくUKロックと間違われていた。

最近のジュリアンは、なんか太ったり
太ったジュリアン・カサブランカス


イージーライダーみたいになったり
ジュリアンカサブランカスとザ・ヴォイズ


髪を赤くしたり
髪を赤くしたジュリアン・カサブランカス
訳の分からないところも多いんだが……

不思議と格好よく見える。
あれ見えない? あれ?

まとめ

飄々としたバンドである。
特に最近は、商売っ気もなく、淡々とやりたいことをやっている感じ。

これだけ世界で売れたら、そうもなれるのだろうけれどね。

そのゆるさとか自由さが、ストロークスのたまらない魅力である。
歯がゆさっていうのかな?
「ジュリアン声出てねえ!」
「新譜思ってたのと全然ちげえ!」
そんなとこを含めて、大好きなのだ。


あんまり有名でない名曲を集めた裏プレイリスト。
チェック・ディス・アウト。