日本では音楽が無意識レベルでなめられていることについて

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この状況になれているだけで、改めて考えてみると、音楽業界はめちゃくちゃ閉塞している。
日本に限って言えば、1万枚どころか数千枚の売上でオリコンチャート入りするくらい音楽メディアの売上は少なくなっている。

10年前くらいからずっとこんな感じ。
ミュージシャン側は特典をつけたり、アートワークに凝ったり、はまたまたCDを売ることを諦めてインディーズに身を置き、ライブでの収入を得るのを第一に考えたり。

音楽業界はどこへ向かうのか?

まとめサイトで感じた違和感

基本的にぼくも音楽は芸術より娯楽であるべき(ロッド・スチュワートのTシャツを見てほしい、「Fxxk the art, let's rock'n roll」)と思っているがそれは後述。

2chまとめサイトでこんなエントリを見つけた。

手っ取り早いのはこちら。
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2694202.html
要するにこのニュースでの上村くんの友人がラップをしている動画が2ちゃんねるで叩かれているという話。

賛否両論あるのはわかる。
わかるが、このスレッドでは99パーセント「否」の方の意見。

ぼくはこれを見て特に嫌な気持ちになることはなかった。
が、ほとんどの人が彼らをヒップホップライクに言えばディスるわけだ。

なぜか。

彼らのラップの技術が稚拙だから?
彼らが茶化しているから?

ぼくはどちらでもないと思う。
動画をごらんいただいた方々にはお分かりいただけると思うが、上村くんの友人たちは茶化しているわけでもなくギャグにしているわけでもない(少なくともぼくにはそう見える)。技術はアレだとしても。

音楽での自己表現の是非

炎上商法ではないが、名前の売れたミュージシャンが知り合いの死をモチーフに曲をリリースすれば、死を金儲けの道具にするなというのは、まあ分かる。
でもこれをやっているのは、中3の少年たち。これでセルアウトしているわけではない。
ただ、そういう少年たちがいて、報道が駆けつけ、ネタにしているという構図だ。

遺族はもう関わらないでくれ、と言っている中で。どっちが問題なのかと問われればぼくは圧倒的に報道陣に思える。
少年たちはただ音楽が好きで、友人の死を悼んでいる(本当のところは知らない。ぼくも2ちゃんねるも)。

それが叩かれる格好になるのは
日本では音楽で自己表現するのが安いものだと思われている
からではないか。
とりわけ、ヒップホップ、ラップミュージックにおいては。DQNのフィールドじゃねえかと。

クラシックなら偉いか?ジャズなら?クラブミュージックはNG?ロックはどうだ?

人の死を創作の糧にするのは
文学ならいいのか。絵画ならいいのか。音楽はいけないのか。その線引きは何だ?

ニュースを見て嫌悪感を感じる人には理由はないと思う。
ただゴキブリを見れば反射的に気持ち悪いと感じるのと同じだ。
こういう括り方は嫌いだけど、要するにそういう無意識に無条件に出る反応が国民性なのだと思う。

めちゃくちゃ恣意的に言えば音楽をやっている人間というのはいかれている奴だと思われる土壌があるのだ。
※ただし本当にいかれている場合もあるので注意。

音楽はただの娯楽

冒頭のロックンロールについての言及に戻る。

「ロックンロールは誰も救わない。ただ悩んだまま僕らを踊らせるだけ」
ピート・タウンゼント

そのとおりだと思う。
音楽は世界を救わない。ただの憂さ晴らし。

でも。
世界を救わなくても、誰も救わなくても、憂さ晴らしがあることで少しは気持ちが楽になることもある。

アートでなくても、カルチャーではある。

ただ日本では本能的に直感的に低く見られがちだ。

日本の音楽はどこへ向かうか

これは先のフリースタイルラップする少年たちについて直接言及するものではない。あれの是非は別にどっちでもいい。

ほとんどの人は音楽それ自体への敬意と理解がない。
無意識レベルでそうなのだから解決策はないと思う。

もはやCDを買う人間のほうが希少種である。それは誰が悪いのかと言われれば誰も悪くない。
それを生業にする人間がどうやって飯を食うか考えるだけだ。

少なくとも近いスパンで考えれば、数十年単位で後世愛されるような(たとえばビートルズのような)ミュージシャンは日本には現れないだろう。
握手券をつけて若さと愛嬌を小出しに売り、感度の低い若者を流行から半歩遅れてEDMの残りカスで機嫌をとるだけ。
きっとそれらに代わるものが生み出されつづけて、使い捨てにされていくだけ。

才能と売り上げは磨り減って、きっといずれなくなってしまう。

デヴィッド・ボウイは今の音楽シーンを予見してたけど、ぼくにはこの程度しか分からなかった。
でも、愛するものへの尊敬の対価に、CDにお金を払うという普通の行為を守っていくことはできる。

俺たちは夢を売っているんじゃない、CDを売っているんだ
吉井和哉の台詞だった気がするんだけど、ソースが見つからなかったのでぼんやり。