ミーハーと老いについて

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感性は死んでいく。

インプットのピークは多分15歳から20代前半、そのあとはなんとか世の中に遅れを取らないようケアするだけだ。
もちろん、ある程度の年齢に達しても瑞々しい感性を持ち続けている人もいるのだけれど、それはあくまで「歳の割に」という枕詞がついてしまう。


これは悲しい話かもしれないが、きっとそんなことを意識しなくたって生きていけるし、意識して何かが劇的に変わることはない。

あらかじめ今日言いたいことを先に書いておく。

盆栽を始めるのがジジイなのではなく、盆栽にも興味を抱かなくなった無関心さがジジイだ、ということである。

知識を持っていたい意識

ミーハー女子
ぼくの(つまりアラサー男性の)感覚からすると、知識がないことは恥ずかしいことで、それについて多少見栄を張りたい気持ちを持っているのが普通だ。

例えば音楽好きが集まり、話題に挙がったアルバムを自分だけ聴いていないと、「俺それ知らねえわ」と言うのがはばかられる、というような。

ツイッターで「あなたはミーハーですか」というアンケートをとった。
結果から言うと、私はミーハーだし流行ものは自慢したいという層、私は流行ものが好きだがミーハーだと思われたくはない層が1:5くらいの割合になった(ただし母数も大したことはないしぼくのツイッターを見ている人にも偏りがあるはずなので、恣意的な数字ではある)。

ミーハーと言うとやはり表面的なところだけを見ているニュアンスがあるから、そうは思われたくない。
という感覚がやはり普通なのだろう。

表面だけ切り取ればいい感覚

Supremeの並び
ところが、最近では、そうでもないというか、ミーハーであることを隠さない人も多い。
ぼくの目に留まるところで言うならば、シュプリーム(などトレンド色の強いストリートブランド)の購買層にその傾向は強い。

好例
GEAR
メンズファッションをガチる

特徴としては、話題になりそうな服を必死で(時には文字どおりの意味で立ち上げに並んだりして)買い、それ以外での買い物は楽天Amazonで見つかるようなノーブランドの安い服で済ませがち。

「ミーハーなんで、〇〇(モリッシーだったりニール・ヤングだったり)のTシャツは絶対狙います」
みたいに、ミーハーであることを公言する。

ぼくはこれに対して批判は特にないけれど、強いて言うのならば不思議だとは思う。
だってどう考えても、こだわった上でファッションを選んでいる方が上等じゃないか?

でもそのぼくが思う普通の感覚はきっと、時代の流れとともに普通ではなくなってしまう。
そういう変化を脊髄反射で切り捨てるのは老いなのだ。

いずれは、5分単位でブランド服を貸し出して、SNSにアップするための写真だけ撮らせるような商売も出てくるかもな。
いや、ジョークじゃなくて。儲かりそうじゃない?
もしくは既にある?

そう、本筋は新しい感覚を受け入れられなくなること、アンテナの衰えへの危惧で、決してミーハーを批判したいわけではない。
擁護もしないし、真似もしないけれど。

ネット検索の時代では必要な情報だけ最速でピックしていくから、どうでもいい話までまとめてパッケージされた紙媒体のように無駄知識を得られなくなった弊害なのではないか、と邪推している。
雑誌から得た無駄知識が、昔のファッションの多様性を作っていたのではないだろうか。知らんけど。

デジタルとアナログの距離

ディスクユニオン
ふと思ったのは、CDが売れない今の時代についてのことだ。

ちょっと前に、有名アニメの主題歌を手がけるようなバンドのイベントに行ったのだけれど、「そこまでの実績があってもこれくらいのハコでこれくらいの客入りなんだなあ」と感じてしまった。
実際、知名度のない若手が、もしくは高校生のコピーバンドですら気軽に出演するようなハコ。
果たしてバンドは食えるのだろうか。

当然、デカい会場で人を集めているバンドが1番偉いなんて思っていないし、ガラガラのハコで誰も知らない曲を演奏しているバンドが底抜けにクールだったりもする。そんなことは知っている、と付け加えておく。

要するに、やはり音楽で生きていくのは厳しい時代なんだろうなということ。
YouTubeのみならず、Apple MusicやSpotifyがあるこの時代、CDなんて買うのは音楽好きからさらに踏み込んだマニアの域なのかもしれない。

これが新しい感覚だ。
かつての音楽好きが「最近CD買ってないなあ」とボヤくのとは話が違う。
ガキの頃から買わなくてもネットでなんでも観られるし聴けた。なんで買うの? と皮肉でもなんでもなく素直に感じるというハイブリッドさよ。

ぼくが心配なのは、隣の席のあの娘に思い切って声をかけたら、好きなバンドが同じだった! なんてシチュエーションだ。

ビフォー
「じゃあさ、〇〇とか聴く?」
「あ、聴いたことない! 聴きたい!」
「いいよ。明日CD持ってくる」
「やった!」

アフター
「じゃあさ、〇〇とか聴く?」
「あ、聴いたことない! 聴きたい!」
「じゃあ、ググって」
「あーい」

ま、いらない心配だとは思うけれど。
わざわざスペースとコストを犠牲にモノとして所有してるメリットが生まれるひとつのケース。

ファッションでも音楽でも、一番先頭だけをさらっていく時代になりつつあるのだと思う。

それがどういう背景で生まれてきたか、なんてディグはマニアやフリークだけの興味。
若い感性はそっちに費やす時間を新たなトレンドに向ける。

そういう観点でいくと、フリースタイルラップバトルファンないし演者、ひいてはヒップホップファンってすごい好きなものに真摯だなと思う。
知識で負けたくないっていう感覚が基本としてあるし、美意識としてやはり過去へのリスペクトがあるからね。

まとめ

ウンチク、無駄知識、そういったものがなくたって服を着られるし音楽だって出来る。
今は何それって感じでも、それが普通になる時代は(好むと好まざると関わらず)来るのだろう。

過去や歴史にも、そういう若者たちの新しい感覚にも、無関心にはなりたくない。
それが老いだからだ。