Spotifyプレイリスト "More Than Covers"について

ベートーベンをぶっ飛ばせ

ビートルズのレディ・マドンナ。
ローリング・ストーンズのブラウン・シュガー。
ベン・E・キングスタンド・バイ・ミー
リバティーンズのデス・オン・ザ・ステアズ。
RCサクセションの雨上がりの夜空に。

ぼくがバンドでカバーしていた曲たちだ。


More Than Covers

カバーが好きだ。

いや、某J-POPの歌姫みたいな、カバー曲ばっかりやっててオリジナル曲が全然鳴かず飛ばずなのはどうかと思うけれど、ミュージシャンがルーツを示しつつ自分の色を織り交ぜて過去の曲を演奏するのは面白い。

カバーは常に新曲ではなく、過去のものってところがいいな。
いいものは過去のものであっても、廃れはしないってことがちゃんと確認できるから。

というわけで、原曲に比肩する、ないしは飛び越えてくる魅力的なカバー曲を20曲集めた。

Damien Leith - Got My Mind Set On You

原曲はジェームズ・レイ。
でも多分一番有名なのはジョージ・ハリスンのやつ。
昔の曲は、カバー元よりカバーのほうが有名になってしまい、だれが本家なのかよくわからないっていう事態がちょくちょくある。

さてこのカバーはジョージのバージョンにかなり近い。ていうかほとんど同じ。
間奏以降ユニゾンを入れたりアウトロでギターがぎゃんぎゃん鳴ってたりするけど、基本的にはシンプルなカバー。

Kula Shaker - Hush

原曲はディープ・パープル。だと思ってたらディープ・パープルもカバーだった。
ジョー・サウスが原曲とのこと。知らん。勉強が足りないね。

ってことでちゃんとちゃんと原曲も聴いてみたら、1969年の曲にしてはかなりトリッキーな印象を受けた。
土台は69年にしっかり完成してて、クーラ・シェイカーはそれをよりポップな方向に押し上げたって感じかな。スピードも速くていい。
ワウワウギターとか鍵盤が活きてて、やっぱりクーラ・シェイカーのバージョンが一番好きだなと思う。

THE BAWDIES, AI - Hit The Road Jack

原曲はレイ・チャールズ
いろんなカバーの存在する、ソウルのクラシックナンバーである。

男女ボーカルの掛け合いって大好きなんだよ。
日本のロックバンドであるボゥディーズにAIがフィーチャーされている。
AIについては、コーラのCMソングしか印象がなく「中堅ポップシンガー」くらいに思っていたが、歌を聴いてみるとちゃんと黒いノリがあってめちゃくちゃいい。

クラムボン - Lady Madonna

原曲はザ・ビートルズ

クラムボンバージョンは細かいところでベースのアクセントの入れ方が違ったり、オリジナルに近い演奏だけどどこか違う雰囲気。
あと音作りをビートルズに寄せてないから、クラムボンサウンドのままなのも面白い。

Florence + The Machine - Tiny Dancer

原曲はエルトン・ジョン
あの頃ペニー・レインと』という映画の中で使われる印象深い一曲。
しかし初めて聴いたのはジョン・フルシアンテのカバーだったりする。レッチリが真剣にハマった初めてのロックだからしゃーない。

フローレンス・アンド・ザ・マシーンのカバーはちょっと重厚感が増した感もあるが、基本的にはエルトン・ジョンのオリジナルに近い。

原曲では最初のサビをファルセット混じりに、最後のサビはファルセットを使わず、といった細かい歌い分けをしている。
フローレンスの声域からすると全部地声でも普通だと思うが、そこまで忠実に原曲をなぞってファルセットを使っているところから、オリジナルへの深い愛情を感じるのだ。

The Rolling Stones - Roll Over Beethoven

原曲はチャック・ベリー
ベートーベンをぶっ飛ばせ、という最高なタイトルだね。

原曲と比較するのは結構難しい。なぜなら、チャックの時代の音源って大抵が音質が悪すぎてベースが何を弾いているか分からなかったりするからだ(だからといって、最高じゃないのかって言われたら、最高なんだけど)。
ストーンズバージョンはめちゃめちゃ真面目に演奏してる感じがする。黒人のロックンロールに憧れて一生懸命それに近づこうっていう感じ。
近年のストーンズ(この音源は最初期の音源を最近編集したもの)のルーズさはなく、若者の勢いと謙虚さが同時に存在している。

Imagenary Future - Come As You Are

原曲はニルヴァーナ

もう何から何まで違うね。ニルヴァーナがこんなチルな曲になるのかって。
イマジナリー・フューチャーについてはさっぱり知らなかったんだけれど、シンガーソングライターの方らしい。

the bird and the bee - Private Eyes

原曲はダリル・ホール&ジョン・オーツ。
オリジナルアレンジはディスコ風のビート感を取り入れた、悪く言えば時代を感じてしまうサウンド

ザ・バード・アンド・ザ・ビーはエレクトロポップにアレンジしてキッチュお洒落サウンド
これに関しては原曲より全然こっちのが好きだな。

Fall Out Boy, John Mayer - Beat It

原曲はマイケル・ジャクソン

ポップスをロックバンドが演奏するとこうなります、っていうお手本みたいな例だね。
オリジナルはエディ・ヴァン・ヘイレンらがギターを弾いていることで有名だけれど、こっちはジョン・メイヤーがソロを担当している。
PVにはジョン・メイヤーは参加していない。でも演奏を主体としたビデオだから、そこで何を映したらいいものか迷ったのか、マイケル風の衣装を着た男を躍らせたり、手持無沙汰な感じが透けている。ちょっと笑える。

Real Big Fish - Take On Me

原曲はアーハ。

変わり種としてスカなアレンジのこの曲を入れてみた。
アーハがインテリっぽさを感じるとすると、こっちはめちゃくちゃアホ全開な感じで最高。

Red Hot Chili Peppers - Havana Affair

原曲はラモーンズ
ぼくはラモーンズよりもレッチリを先に聴いていた。

原曲はラモーンズらしくもマイナー調シンプルなパンクだが、レッチリバージョンはテンポを落としてバラッドに仕上げている。
ジョンのコーラスもめちゃくちゃいい。というか、ジョンのコーラスがめちゃくちゃいい
ライブでも披露される、本人たちもお気に入りの曲のようだ(ジョン脱退後はわかんないけど)。

Guns'n Roses - Live And Let Die

原曲はウィングス
ポール・マッカートニーというソングライターの幅とポップ性を3分間に集約したような曲だ。

原曲ではホーンなどたくさんの客演を必要とする構成になっているが、ガンズはそのほとんどをギターで再現している。
曲のアレンジ自体はオリジナルに忠実でありつつ、ガンズの魅力が素直に反映されていて好感の持てるカバーだ。

PJ Morton - How Deep Is Your Love

原曲はビー・ジーズ
これもジョン・フルシアンテのソロカバーで入ったパターン。

グラミー賞で知ったんだけど、この人マルーン5のキーボードなんだね。
なんていうか、贅沢すぎるな。歌も上手くて、音楽的才能に恵まれ、ソロでもビッグネームのバンドでも活躍て。どないやねん。

オールドスクールなソウルっぽいアレンジなんだけど、ぼくが注目するのはアウトロなんだよね。
ちょっと雰囲気が変わってファンクノリになってそのままフェードアウトすんの。これも贅沢。
こっからどんな展開すんだ? と思わせて、展開せず終わる。

Overcoats - Fix You

原曲はコールドプレイ。
ここまで書いてきて「男性ボーカルの曲を女性ボーカルで柔らかい雰囲気のアレンジにされたら好きになってしまう説」が芽生えてきた。

シンセ? キーボード? の雰囲気は似てるけど、終盤へ向かっていく盛り上げ方が違う。
コールドプレイバージョンはドラムが後半まで出てこないのに対して、オーバーコーツはギターが後半から活躍し始める。
ボーカルがどんどん重なってくるのが気持ちいい。

Nada Surf - Where Is My Mind?

原曲はピクシーズ

ナダ・サーフがピクシーズと雰囲気の似たバンドだから、ふつうに演奏しても雰囲気は大きく変わらないか。
と思わせて、後半コード進行を変えてくるあたりがにくい。
個人的には「うーうー」のコーラスが好きだから、ここがデカくフィーチャーされているのが素晴らしい。

Scott Bradlee's Postmodern Jukebox - Creep

原曲はレディオヘッド

なんかずるいカバーだな!
ヘイリー・ラインハートをボーカルに据え、ピアノとホーン隊とウッドベースでアレンジ。小洒落たバーとかで演奏してそう。
そりゃいいに決まってんだろっていう。でも原曲のサビでギターがガガッ! て入ってくる気持ちよさも捨てがたいけどね。

Linda Ronstadt - Tumbling Dice

原曲はローリング・ストーンズ

ストーンズバージョンと比べて感じるのは、めちゃくちゃアメリカっぽい!
何の差なんだろう? ストーンズアメリカをルーツにするブルーズやソウルに憧れて始まったバンドでも、やっぱり音はイギリスって感じがする。
でもリンダのカバーはアメリカでしかないんだよな。この辺の差は説明するのが難しい(日本だとSuperflyとかが女性ボーカルにしてストーンズカバーをやっているけど、やっぱりイギリス感ではないと思う。それもかなりいいカバーなんだけど)。

Mötley Crüe - Anarchy In The UK

原曲はセックス・ピストルズ

モトリーバージョンはテンポを上げてモッシュピットのアンセム感が高まっている。
速弾きギターソロはありつつ変に長尺にしたりはしていない。
意外とシンプルなカバーだが、最後の最後のドラミングが完全にメタルのそれになるのがいとおしい。

Ituana - Disorder

原曲はジョイ・ディヴィジョン

陰鬱な雰囲気で疾走するロックを、リバーブ感のあるキーボードと女性ボーカルでしっとりしたポップスに変えている。
ジョイ・ディヴィジョンは寝る前に聴いたら悪い夢でも見そう(ジョイ・ディヴィジョンも好き)だけれど、イツアナは眠れるBGMのような穏やかさがある。

KIRINJI - Fat Bottomed Girls

原曲はクイーン。
クイーンのバージョンはシンプルなスタジアム系ロック。

キリンジのカバーはアコースティックギターのアンサンブルが緻密かつ繊細で美しい。
それなのに、歌われてる内容が「下半身のむちむちした女は最高だぜ~」って内容なのがちょっと笑える。

まとめ

新旧織り交ぜていいものを集められたと思う。
特に好きなのはレッチリのハヴァナ・アフェアかな。

CDが売れない時代にはなったけれど、プレイヤーからリスナーへ届ける手段はネットを介して多岐多様になった。
そんな中、ただの「歌ってみた」とか「コピー」とは違う、本物かどうかの分水嶺がカバーにはあると思う。