とてもシンプルな、普遍的な形状の二つ折りだ。
そういえば、最近長財布をバックポケットに突っ込んでいるタイプの人を見かけなくなった。
時代は変わっていく。
時代が変わっても好きでい続けられるものを買ったつもりだ。
購入までの経緯
少し前にミニ財布とキーケースが一体化したものを探していた。
ぼくはメイン財布とミニ財布の二つを持ち歩き、鍵はカラビナにつけてベルトループにぶら下げるスタイルをかなり長いこと続けていたのだけれど、先日カラビナにつけていた鍵がいつの間にか全部どこかに消えていた。
理由はよくわからないが、何かのタイミングで取れてしまったらしい。
持ち物を細分化することで、忘れ物をする確率も上がる(忘れ物をした時のリスクを分散しているとも言えるけれど)。
まとめられるものならまとめてしまったほうがいいだろう、というわけだ。
結果から言うとちょうどいいものを見つけることはできなかった。
その際に訪れた土屋鞄、店舗に滞在していた時間はほんの5分程度である。
その後、ワークショップで再訪した。
すると「以前一度いらっしゃいましたよね」と声をかけられた。
滞在時間5分の客のことを覚えているなんてすごいなと感心した。
ワークショップ自体もとても楽しく、次に財布を買うならここで買おうと決めた。
決めてから1週間後、もうすぐにでも買い換えたい気持ちになっていた。
そして今に至る。
土屋鞄製造所 ブライドル 二折財布のディテール
タンナーは1900年創業、英国の名門J&E セジュウィック社。
おそらくぼくの写真では全く伝わらないが、カラーはダークグリーン。
ブライドルレザーは以前ホワイトハウスコックスの三つ折り(定番!)を使ったことがあるが、1年くらいで紛失した(最低!)。
そのため、具体的にどんな経年変化をするのかちゃんと噛みしめることができなかった。
今回は10年使う気概でいるので、じっくり向き合いたい。
「二つ折り」ではなく「二折」なのは土屋鞄の表記に準拠。
パッケージ
パッケージという呼称で正しいのかな。
間違ってはいないと思うけれど。
革の取り扱いに関する注意書き等が同梱されている。
表
表面に浮いた白い粉のようなものはブルームと呼ばれる。
J&E セジュウィック社のブライドルレザーとは
成牛の肩の部位を100%植物性のタンニンでピット鞣しし、さらにドラム鞣しをするという2度の工程を経てベースレザーを仕上げる。その上で、革にロウを手作業で何度も擦り込み、耐久性を高めている。英国国内で厳選された原料の手配から出来上がりまで、実に4ヵ月半もかかる職人技の結晶だ。
イギリスは雨が多い。皮革製品を守るために水をはじくロウ成分を染み込ませたのがブライドルレザーのルーツらしい。
そのロウが表面に浮いて出たものがブルームだ。
これは初めにブラシなどで落としてもいいし、使っているうちに自然に馴染んでいくのを待ってもいい。
以前ホワイトハウスコックスを使った際はすぐにブルームを落としてしまった。
今回はこのまま使って、新品時にしかないルックスを楽しむことにした。
内側
内側はソフトヌメ革。
(写真ではそう見えないとしても)ダークグリーンと明るいブラウンの配色は好ましい。
あんまり気にしたことがないが金運的にもいいそうだ。緑も茶色も自然の色だから。という理由だったはず。
この内側にこの財布を買おうと思ったきっかけのひとつがある。
カード室の3段目だけ少し色の濃い革が使われていて、これは天然素材がゆえのムラなのだけれど、店員さん曰く「アクセントになっていてかわいい。カードを入れたら隠れてしまうとしても」。
財布選びでこれともう一つ候補があった。
もう一つの候補は在庫がひとつしかなく、これはふたつあったので革の色味などを吟味することができた。だからブライドルにした。
ブライドルの在庫がひとつで、選ばなかった方が複数あったらそっちにしていたかもしれない。接戦だったのだ。
ブランド名などの刻印はなく、革を裁断する様子をアイコン化したロゴがあるのみ。
潔くてよい。
刻印というと凹んでいるものをイメージするけれど、これは逆側から型押ししているのか、盛り上がっている。
コイン室はほとんど使わないが、あるに越したことはない。
内側まで同様のソフトヌメ革。
札入れには仕切りがある。仕切りもソフトヌメ革。
仕切りはない方が薄くなるんだけど、ぼくはあったほうがいい派かな。
革がまだ硬いので、札を取り出すくらい開くとギュッと鳴く。
これも使いはじめならではだ。
コバ
コバ部分は光沢感のある仕上げになっている。
革の硬さゆえに置いても閉じない。
そのうち馴染んでくるだろう。
縫製
縫製も、ふたつあった在庫で綺麗な方を選んだ。
と言っても、ほんの些細な差で、どちらも綺麗だった。
ブライドルレザーは硬いので、海外製品は結構ステッチがガタついていたりする。
それこそホワイトハウスコックスとか、グレンロイヤルとか。
その辺の丁寧さは日本ならではだと感じる。真面目に作っているのが伝わる財布だ。
付属品
ブライドルレザーは油分をたっぷりと含んでいるため、購入から半年~1年は大きなケアは必要がないという。
「でも、思い出したときでいいので、ブラシをかけてやってください。皮革はもともと動物の皮膚ですから。汚れたら綺麗にしてあげた方がいいのです。毛穴が詰まったりするので」
「思い出したとき世話するって、サボテンみたいですね」
「そうです、毎日やる必要はないけど、たまにでも」
「サボテンですら枯らす人、たまにいますよね」
というような会話をした。
小さな馬毛ブラシ。思い出したときに使おうと思う。
まとめ
形状はいたって普通の、二つ折り財布だ。
二つ折り財布と言われたら大体こういったものを思い浮かべるのではないだろうか。
上等の革と、上等の職人が作った普遍的な財布。
冗談抜きで10年使おうと思っている。
「枯らしませんでしたよ」と言いたいのである。